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TRUE LOVE ~荒木経惟「机上の愛」~

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2017/05/15

今回5回目を迎え、GWの観光客賑わう京都でのアートフェスとしてすっかり定着しつつある

「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」

 

京都内の寺院など歴史的建造物や文化博物館など近代のモダン建築を展示会場とし、各所をめぐるだけで京都観光もできてしまうフェスティバル。

 

今回のテーマは「LOVE」

 

国内外の著名な写真家が“愛”をテーマに作品を京都の各所で披露する中、私は出展者のリストを見ながら、“愛”といえばこの人しかいないと思い、建仁寺内の両足院で開催されている荒木経惟の「机上の愛」を観に行きました。

 

 

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「アラーキーって女性を縄で縛ったりポルノ系の写真を撮っている人でしょ?それの何が愛なの?」

 

こういうイメージをお持ちの方も多いと思います。

 

過激なヌードや緊縛ものの作品も含め、花や空、飼い猫を取り続けた作品、それら全ての根本、彼を突き動かす原動力は愛だと感じます。

もっと言えば、早くに亡くした最愛の妻、陽子さんへの愛だと言えるのではないでしょうか。

そのせいか彼の作品は、愛という美しさの裏でどこか悲しみを含んでいて、目を覆いたくなるほど生々しい生と死というテーマを感じさせます。

 

実際に彼は、アラキメンタリーという自身のドキュメント映画内でも、

 

「女性の方がたくさん持っている。肉体的にも精神的にも女性の方が上。教えてくれる要素、常に母としているから。なんだって女から出てきたんだから勝ってこない。」

と女性に対しリスペクトを表示している一方で、

 

「肉体の醜さ、人生の卑怯さ、女はこういうのいっぱい出てくる。それを撮っちゃう。」

とも発言している。

 

美しさと汚さ、対峙している様で混在している要素をありったけのエネルギーで撮ることによって、生きることを表現している様に思えます。

それができるのは、最愛の人の死を経験した彼だからではないでしょうか。

 

彼の作品に、泣き妻陽子さんを取り続けたものがあります。

 

病床で痩せた彼女の手を取る写真や、危篤の知らせを聞き、まだ蕾のコブシの花の枝を抱え彼女の病室に向かう場面の写真、彼女が息を引き取った際に咲いた花、それを枯れるまで取り続けた写真、それら全てが愛に満ち溢れ、生と死が痛いほど表現されていました。

 

のちに彼はこう言います。

 

「男の子は悲しみが思い浮かんでも言ったり見せちゃダメ。自分だけのものにして、シャッターを押すことで消していくんだよ。」

 

私はこの作品と、彼の言葉に涙が止まりませんでした。

 

そして、アラキメンタリーの劇中でアイスランドの音楽家ビョークは、陽子さんを撮った作品群をこう評します。

 

“TRUE LOVE”、と。

 

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今回、京都国際写真祭で展示されている荒木経惟の作品は、気に入った静物を即物的に机上にポンっと置いて撮影する、という新しい試みにチャレンジしています。

蛇や花、といったアラーキー作品ではおなじみのモチーフも登場します。

 

禅寺に極彩色の写真、というコントラストもまた不思議な魅力のある展示となっています。

 

今までアラーキー作品はちょっと…と懸念していた方にこそ、彼が愛というテーマに莫大なエネルギーを費やして取り組んできたことを頭の片隅にでも置いて鑑賞してみれば、きっと新たな発見があると思います。

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ayashimohara

ayashimohara

1986年生まれ 京都嵯峨芸術大学でデザインを学んだのち、アクセサリー制作会社にてレディース服飾雑貨、アクセサリーのデザイナーを経験後、ティーン・子供向けアパレル商品制作会社にてテキスタイル図案デザイナー・イラストレーターとして勤務。 在職中から、個展、展覧会に多数参加し、アート活動を精力的に行う。主に女性を中心に人物イラストを作成し、海外ライクなカラーリングや作風が受け、ニューヨーク、ロンドン、シドニーなど多くの海外ギャラリーで活動。 写実的なリアルなイラストから、アメコミのようなポップなテイストも制作。また、絵の具や鉛筆を使った手描きも、パソコンを使ったグラフィカルなデジタルイラストも、色々なテイストのイラストレーションを制作。アパレル会社でのデザイン経験から、ファッションやトレンドを意識した作風で、アパレル商品や、女性向けイラストなどに作品をご提供。様々な媒体で活動中。 商業イラストだけでなく、アート活動も随時行なっておりますので、展覧会やアートエキスポなどのお誘い、ご依頼も承っております。
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