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「最後は人間性」これって綺麗事?

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ayashimohara

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2017/08/15

 
 
イラストレーター・アーティストのAya Shimoharaです。
 
 
前回前々回のコラムではギャラリー展示の意外と知られていないこと、と題し海外キャラリーのことについて色々と書きましたが、今回はそのスピンオフのようなコラムを書かせていただこうと思います。
 

ブルックリンでの個展の際、個展宣伝のために行った飛び込み営業や、個展期間中に感じた反省点や気づきなどを通して感じたこと、
 
「最後は人間性、これって綺麗事?」
 
どう思いますか?
 
時に綺麗事かもしれませんが、絶対に忘れたくないことでもありますよね。
 
 
 
 

海外でアート活動するために教わったノウハウやマインド

 


 
海外で活動ができるまでは、美大在学中にレンタルギャラリーで行った展示と公募展やコンペで入賞した際の回覧展示くらいしか経験がなく、絵を描きたい、アートを生活の一部にしたい、と思う人たちが最初にやりがちな、まずはコンペに出して受賞歴を作った方がいいよね?とういうマインドで制作していました。

 

そんな何も知らないひよっこの私が個展期間中に打ちのめされた体験を恥ずかしながらご紹介させていただきます。
 
 
 
 

英語でのプレゼン

 
 
はっきり申し上げてプレゼンを軽視していました。
 
本質は作品であって、いちいち語らなくとも絵が魅力的であればそれだけで十分でしょ?という考えでいました。
 
確かに事実だとも思います。
 
キュレーターやスタッフがきちんといるギャラリーでは、作家に代わって来場客へ接客や作家・作品の説明をしてくださいます。なので、まずは来場客へのプレゼンの前に、ギャラリースタッフへのプレゼンが必要になります。
 
何を描こうとしたのか、動機は何か、影響を与えたもの、背景、ピグメントへのこだわり…etc
 
これらをきちんと自分の言葉で、さらに英語で。
 
私は明らかに準備不足でした。結局、別フロアで同じく個展を開く日本人アーティストの方に通訳をお願いしてもらいました。
 
色々と打ちのめされることが多かった個展でしたが、このことが一番凹んだ出来事かもしれません。
 
 

だって、「自分の作品を自分で説明できない」こんな情けないこと他にありますか?
 
 
 
 

長文のステイトメント

 
 
日本人アーティストのプロフィールって割とさっぱりしていませんか?
 
肩書きや展示履歴、受賞歴を時系列に並べたものと、簡単な説明文。
 
いわゆるCV(履歴書)というものが多いです。
 
私も完全にそれでした。個展へ持参したポートフォリオなどのプロフィールは完全にCVでした。
 
来場客の多くが熱心にポートフォリオも見てくださるし、作品を鑑賞した感想と質問をくださいます。
 
作家がどういうことを表現しようとしているのか想像し、自分なりの見解を持つ。そしてそれを作家へ伝え、実際はどうなのか、と質問をくださいます。
 
とても嬉しくて光栄なことに感じながら、いかに自分のプロフィールが拙いか思い知らされることでもありました。
 
プロフィール、バイオグラフィーにプラスして“ステイトメント=解説”が必要になります。

 
 
私個人の意見ですが、このステイトメントも全部丸裸になる勢いで書かずに、少し想像の余地を残したいな、と思います。
 
やはり日本人ですから、そういう奥ゆかしさも持ち合わせたいですしね。笑
 
 
 
 

受賞歴よりもアピール力

 
 
日本のアート界って妙に受賞歴にこだわる気がします。なんとなく受賞歴を作らないと!と思ってあれこれコンペに出してみたり…
 
前述しましたが、私もそういうマインドで制作をしていました。
 
しかし、海外ギャラリーから受賞歴を一度も問われたこともないし、そういったことを聞いてくるお客様もいない。
 
おそらく、「受賞歴、という肩書きよりも、私がこの目で観て良い!と思ったらそれが良い!」というスタンスなのだろうと思います。英語のプレゼン、ステイトメントを含んだプロフィールもそうですが、いかに自分を魅せるか、アピール力が問われる分野なのだなぁ、とつくづく感じました。
 
 
 
 

まずは情熱を伝えなきゃ

 
 
個展開催中、飛び込み営業をしました。
 
ギャラリーと同エリアのブックストアやカフェ、他ギャラリー、それからNYでも特にアートが盛んで少し格式の高いチェルシー地区のギャラリーなど、アポなしでDM片手にアタックしました。
 
以外にも大半のところが快く受け入れてくれました。
 
個展を開催していまして、と説明すると、目を輝かせて「 Congratulations!」と迎えてくださった時には、昨日のオープニングで打ちのめされた分、暖かい気持ちに癒されました。
 
しかし、そんな良い話だけではもちろん無いです。
 
チェルシー地区での営業は少し厳しかったです。完全なるコマーシャルギャラリーが大半なので、所属アーティスト以外の宣伝はNGなところも多く、断られるケースが多かったです。
 
対応も冷たい人もいました。とあるギャラリーにて、小脇にチワワを抱え、大きなサングラスをしたセレブ風の、オーナーらしきご年配女性に声をかけ、DMを差し出した途端、
 
「Don’t need it !!」
 
怪訝な顔で突き返されました。
 
そのギャラリーで受付をしていた若い女性スタッフが、しょんぼり肩をおとした私にすかさず声をかけてくれました。
 
 
 
 
「ごめんなさい。所属アーティストのDMしか置けないことになっているんだけど、私はあなたに興味があるから、個人的にあなたの個展を見に行くわ。だから一枚DMをくださる?」
 
 
 
 
何十枚、何百枚のDMをはけさすよりも、その一言をもらえることの方がよっぽど価値があるように感じた経験でした。

 
 
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自分の知識、ノウハウを人に与え、他者の育成に貢献する人は決まって魅力的な人が多い

 


 
これは私の持論です。
 
アート活動を通して出会った方でも、フリーランサーとして仕事の関係で知りえた方でも、どうしてそんなに親切に教えてくださるんだろう?という方がいます。
 
そういう方は決まってカッコいいです。
 
普通なら、自分が得た知識やスキル習得の仕方は、パクられたくない、自分だけの情報にして自分だけが得できた方がいい、と思います。もちろん、それを人へ開示し、教えることを完全なビジネスとして行なっている場合もありますし、情報や技術を開示することで自分への注目を集めることができるので、結果、自分の仕事にバックされる、という事もありますが、
 
人に与える、という行動は勇気が伴うことだと思いますし、親切心がなければできません。
 
ビジネスライクでさっぱりした関係も大事かもしれませんが、それだけじゃない。人間ですから。
 
最初の個展で、プレゼンも出来なければ、ステイトメントもかけていない、ダメダメだった私に対して、普通ならばもうお声はかからないと思います。
 
海外で活動するためのノウハウやマインドをいちいち教育しなくても、海外で活動したいのならば、それぐらい知っておいてね、となります。
 
でも、逐一教えてくださり、今でも気にかけてくださる方々と接していると、自分自身もいずれは与えられる側へと成長したいと思えるし、何事にもまごころや親切心を忘れたく無い、と思います。

 
 
 
最終的に、最後まで捨てられないものは、やはり「人間性」。
 
 
 
私は、あの時「Don’t need it !!」と突き返したおばさんより、一枚くださる?と言ってくれたお姉さんでありたい。

 

 

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1986年生まれ 京都嵯峨芸術大学でデザインを学んだのち、アクセサリー制作会社にてレディース服飾雑貨、アクセサリーのデザイナーを経験後、ティーン・子供向けアパレル商品制作会社にてテキスタイル図案デザイナー・イラストレーターとして勤務。 在職中から、個展、展覧会に多数参加し、アート活動を精力的に行う。主に女性を中心に人物イラストを作成し、海外ライクなカラーリングや作風が受け、ニューヨーク、ロンドン、シドニーなど多くの海外ギャラリーで活動。 写実的なリアルなイラストから、アメコミのようなポップなテイストも制作。また、絵の具や鉛筆を使った手描きも、パソコンを使ったグラフィカルなデジタルイラストも、色々なテイストのイラストレーションを制作。アパレル会社でのデザイン経験から、ファッションやトレンドを意識した作風で、アパレル商品や、女性向けイラストなどに作品をご提供。様々な媒体で活動中。 商業イラストだけでなく、アート活動も随時行なっておりますので、展覧会やアートエキスポなどのお誘い、ご依頼も承っております。
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「最後は人間性」これって綺麗事?